PEACE ADに行って来た(その2)

次は伊藤剛先生。広告の専門家で、平和をどう広告するかについてのプレゼンを行ってくれました。以下、また箇条書きで。

●今の戦争はプロパガンダが非常に重要
 ・911の時にはシャーロット・ビアーズが国務長官になり、アメリカのブランド化と世論形成を行った
 ・シャーロット・ビアーズはマディソン街(広告業界)の女王と言われている人
湾岸戦争時のプロパガンダに「ナイラの証言」がある
 ・クウェート人のナイラという少女がクウェートの病院でのイラク兵の蛮行を証言
 ・それにより世論がイラク許すまじへ
 ・実はナイラは在米クウェート大使の娘でクウェートに行ったことすらなかった
●戦争広告代理店
 ・ボスニア紛争におけるPR企業の役割を取材したドキュメンタリ
 ・ボスニア紛争では「Ethnic Cleansing(民族浄化)」というキーワードが効果的に使われた
ナチスドイツの宣伝相ゲッペルス
 ・祝祭日すら掌握していた
●コミュニケーションの図
 A→B
   B→C
      C→D
 ・BからDはロジックから生まれる=ロジカル
 ・ロジカルなものはいくらでも作ることができる
 ・Aはロジカルではない=前提
●コミュニケーションとはこの前提を考えることに他ならない
 ・前提を作るものはマスメディア
 ・ではメディア・リテラシーとは? 情報を疑うこと?
●メディアは編集している。メディアの前提がある
●平和の広告は難しい
 ・平和や愛は目に見えない。言葉にすることが難しい
 ・言葉にする事が難しいものを「前提」に使っている
 ・失ってから価値に気づく類いの物を、失わないようにしようと広告をうつことが難しい
 ・それは言葉では伝わらないのかもしれない
●平和を守るための広告映像作品のサンプル

 伊藤先生のお話のテーマは、一貫して広告とコミュニケーションについてでした。広告(プロパガンダ)が戦争において如何に重要なことを成し遂げて来たかの歴史から始まり、平和をアピールする広告とは何かを模索しているという話で終わりました。

 特に戦争と広告の歴史は非常に興味深いお話が多かったです。昔見に行った、「幻のロシア絵本展」という展覧会でもスターリン時代のソ連が絵本やポスターをプロパガンダに利用して世論を動かしていたというお話が出ていたのを思い出しました。日本でも色々な雑誌とかで「ススメ一億火の玉だ」とかキャッチコピーを作って国威高揚をしていましたが、それもまさにプロパガンダそのものですね。で、こういった戦争とプロパガンダの関係性については、「民族浄化」というキャッチコピーを生み出したボスニア紛争におけるPR合戦を詳細に取材し、その結果を本にまとめた「戦争広告代理店」という本を薦められました。即座にその場でAmazonで買おうとしたら、実は家にあることが発覚したので買わなくて済み、今読んでたりします。この本については何かエントリを書きたいな。

 最後のサンプルの映像は、多くの人に「あなたにとっての幸せ(平和だったかも)とは何ですか?」という問いかけを行い、それを感じさせる写真を撮ったものをかっこよくつなげていく映像です。なんかこう書くと陳腐に聞こえちゃうかもですが、実際の映像は非常にかっこいいものでして。平和って失わないと気づかないとは良く言いますが、何でも無い平和な日常こそが守るべきものなんだというメッセージが強く伝わってきました。なるほど。これがPEACE ADなんだなと感じさせる映像だったと思います。

 で、マエキタ先生のお話はまた続くのでした。多分明日に。