自転車ロードレースの楽しみ方について考えるその1

ちょっとFacebookのノートに書いていたのですが、思い立ったのでブログの方にも転記することにしました。最新のはFacebookのところにあります。

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最近日本でもブームが広がってきている自転車ロードレース。でも、ただ単に1位を取ればいい他のレース競技と違って1位を狙っていない選手がいたり(そういう選手ももちろんあわよくば1位を狙っていたりするんですけれども)よくわからない、という人もいると思うので、簡単に解説してみようかと思います。


ただ、自転車ロードレースに関してはまず前提となる知識がどうしても必要となってしまう部分がありますので、まずはその辺から説明していきたいと思います。


○まずは自転車について理解しよう


ロードレースはいわゆるロードバイクロードレーサー)と呼ばれる自転車に乗ってレースをします。このロードバイクは普通のママチャリとは部品の精度とかが全然違います。まず、とても軽いこと。ママチャリが18kgとか20kgとかあるのに対して7kg弱しかなかったりします。自転車は自分の体重と自転車の重さを人力で運ぶ乗り物ですから、トータルの重さが軽い方が有利になるのです。なので、軽いのですね。


さらに個々の部品の精度の違いとしては、たとえばママチャリとロードバイクをひっくり返して、同じ力でタイヤを回してみるとわかります。ママチャリは地面を走っていないのにくるくる回るのがわりと10秒ぐらいで止まってしまうのに対し、ロードバイクは2分ぐらい回り続けたりします。


その結果どうなるかというと、自転車なのに時速60kmとかが平気で出ちゃったりします。さらには山を下るときに、世界で一番早い選手なんかは軽々と時速100kmを超えちゃったりするわけです。生身で人力なのに。ちょっとした原チャリより早いどころか、車よりも場合によっては速度が出ちゃうんですね。


あと、ママチャリとロードバイクの違いはペダルの回し方にもあったりします。ママチャリでスピードを出して走ろうと思うと、ペダルをがんがん踏み込んでいくことになります。でもロードバイクの場合は、そんなに踏み込むというイメージにはなりません。もちろんスピードを上げていくときは踏み込むことになるのですが、スピードを維持する時にはペダルを回す感覚になります。これはなかなか自分で走ってみないとわからないのですが、ペダルを回し続けるというのはペダルを踏み込むのに対して、それほど疲れません。何百kmと自転車で走っている人達は、このペダルを回す運動をしているのです。


というわけで、ロードレースは自転車でのレースと言っても侮る無かれ。時速60kmとかで争うスピード感あふれるレースなのです。


○自転車は風との戦い


さて、そんな時速60kmとか出てしまう自転車の世界で最大の敵は「風」になります。より正確には「空気抵抗」です。


車に乗っていて時速60kmぐらい出している時に、窓をあけて手をちょっと外に出してみるとかなりの空気抵抗を感じると思います。これがそのまま自転車の場合は全身にくるわけです。なので、速度が上がれば上がるほどより強い空気抵抗と戦わなければなりません。もちろん空気抵抗がある中で強引に走れば、それだけ体力が失われていくことになるのです。


空気抵抗に勝つにはどうしたらいいか。これはもう「人の後ろにつく」のが一番になるのですね。いわゆるスリップストリームです。前の人の後ろにぴったりとつけば、風は自分を避けて通ってくれます。さらに、空気が回り込むような動きをするので、場合によっては普通に走るよりも後押しをされているような感じで走れちゃうのです。その結果、同じ所を走っているにも関わらずに、前の人はたっぷりと空気抵抗を受けて疲れまくり、後ろの人はあまり疲れないで走れてしまうのです。この、あまり疲れずに走っているということは、あまり足を使わないで(全力を出さないで)走ることになるわけなので、「足を溜めている」なんて表現されたりもします。


○基本は集団で走る


さて、以上のことを踏まえておかないと自転車ロードレースを理解することはできません。つまり、かなりの速度が出て、空気抵抗が最大の強敵であるということです。この空気抵抗は本当に強敵で、この強敵に立ち向かうには集団で挑むしかないのです。というわけで、ロードレースは基本的には集団で走ることになります。


集団で走るメリットはどこにあるか。それは、空気抵抗を受ける人を最小限で済ませることができるのですね。集団の先頭の人達は空気抵抗を受けますが、それ以降の人達は空気抵抗が軽減された状態で走ることができます。じゃあ先頭の人達だけが疲れちゃうじゃないかと思うのですが、大丈夫。疲れた人達は今まで後ろで楽をしていた人達に変わってもらい、自分が後ろについて楽をすることで体力の回復を図ることができるのです。こうやって、みんなでローテーションを組みながら負荷を分散して走っていくので、大人数の集団であればあるほど有利になるのです。単純に10人の集団だと負荷が10分の1ずつになるところが、20人の集団だと負荷が20分の1ずつになると考えるとわかりやすいでしょう。いや、実際にはそんなに綺麗な数字にはならないんですけどイメージとしてそんな感じなわけです。


ここでポイントになるのは、この集団は敵味方関係なく形成されるということです。空気抵抗の前には敵も味方も関係ありません。敵も味方も仲良くローテーションを組んで、負荷を分散しながら走って行くというわけです。


つづく