自転車ロードレースの楽しみ方について考えるその2

○自転車チームについて


自転車ロードレースは個人戦でもあり、チーム戦でもあります。どういうことかというと、チームとして出場するのですが、最終的な順位は個人のタイムによって出されるということになります。一番早くゴールに飛び込んだ人が1位になるという、ある意味わかりやすい結果が出るのですが、それをチームの力で勝ち取っていくという、ちょっと他のレースには無い要素があるのです。


チームの力で個人の順位を勝ち取るということはどういうことか。それは、チームの中で役割が明確に決められているということでもあります。それが、エースとアシスト。極端な話、チームはエースを勝たせるために存在します。エース以外の選手はアシストとなり、献身的にエースに尽くすのです。


例えばチームで走っている時。エースはたいてい前には出ません。アシストがエースの風よけとなり、交代で前を走るのです。それによりエースは十分に足を溜めることができ、勝負どころで他のチームのエースを打ち負かすのが役目なのです。アシストは他にも、自分の体力が無くなるの覚悟で他チームの牽制をしたり、逆に相手チームの牽制をつぶしたり、エースにトラブルがあって遅れた時にはリタイア覚悟の勢いで牽引したりと、本当にエースを勝たせるためにあらゆることをします。タイヤがパンクしてしまったエースのために、自分の無事なタイヤを差し出す(当然自分は走れなくなります)のもアシストの役目だったりします。


このエースとアシストという関係性がなかなか最初は難しく感じると思います。基本的にはエースが栄誉を手にするわけなので、アシストだって自分もそういう栄誉を手にしたい! と思っちゃいますよね。エースに献身的に尽くした結果、エースは優勝でもアシストは途中でリタイアなんていうことも珍しくないわけですから。


でも大丈夫。ロードレースの世界では、エースの勝利はチームの勝利、すなわち全員の勝利なのです。エースは獲得した賞金をみんなに分配しますし、スポンサーからのボーナスだって全員に出るのです。何より、アシストが頑張らなければエースは勝てないということを、他ならぬエースが知っているのですね。なので、エースとアシストは仲が悪いとかそういうこともないのです。まあ、中にはちょっとやんちゃな子がいたりしますけれども。


テレビで見られるような大きなロードレースの場合、1チームの人数は9人です。エースは1人。残りはアシストです。たまにダブルエース態勢で、どちらか調子のいい方が真のエースみたいな戦術を採るチームもあるのですが、基本的にはチームのエースはそれぞれ1人ずつと思っていいです。ちなみに現在チャンピオンで連載中の漫画「弱虫ペダル」では1チーム6人でインターハイやっていますね。あれも、エースは1人で残りはアシストになるのです。



○脚質について知ろう


自転車ロードレースはその名の通り、普通のロード(道)を走ります。普通の道は当然のように、いろいろなところを通っているわけです。山あり谷ありですね。つまり、平坦な道だけを走ったり市街地だけを走ったりするだけではなく、山を登ったり下ったりすることもあるわけなのです。


例えば駅伝でも平地に早い人がいたり、山が超得意な山の神がいたりするように、自転車ロードレースにだって平地が得意な人がいたり山が得意な人がいたりするわけです。それを、ロードレースの世界では「脚質」という言葉でよく表したりします。本当はもっともっと細かく脚質が分類されるのですが、まずは一番大雑把に分類したこの3つさえ把握していれば大丈夫、というのを挙げてみます。


■スプリンター
平地を走るのが得意というよりも、平地を走っている時に一瞬だけ爆発的な速度を出すのが得意というのがスプリンターです。ロードレースは基本的に集団で走るので、じゃあどこで順位の差がつくの? というと最後の最後のゴールスプリントで順位がついたりするレースがあります。つまり、集団から飛び出して一瞬でトップスピードを出し、他の人をぶっちぎってゴールするのです!


こういうタイプの人はむきむきなマッチョタイプが多かったりします。ようは、陸上競技で100m走が早い人タイプですね。一人で飛び出してなおかつ凄いスピードを出すので、物凄い空気抵抗を受けるのですが、それに負けないで自転車を漕ぐ筋力が必要だからです。


■クライマー
クライマーはその名の通り、山を登るのが得意な人です。山登りといっても舗装された道を上っていくのでそれほど大変という印象を受けないかも知れませんが、アルプス山脈だってピレネー山脈だって自転車で上っちゃうんです。富士山よりも高く上ったりするわけですから、それはそれは大変なのです。そういうところで、他の人が苦しみながら登っているところをひょいひょいと軽やかに駆け上がっていくのがクライマーなのです。


こういうタイプの人は細身のスマートなタイプや小柄な人が多かったりします。ようは、マラソンが早い人のようなタイプですね。山を登る時には、自転車の車重+自分の体重を持ち上げる運動になるわけです。そうなると筋肉の多い、大柄なマッチョな人は自分の体重が重い分とても疲れてしまうというわけです。一方小柄で体重も軽い人は持ち上げる重さも少ないので、ひょいひょい登ることができるのですね。


■オールラウンダー
山でも平地でもどんとこい、なのがオールラウンダーです。実はロードレースで一番大きく差が出るのが「山」です。平地を走っている時に、最後のスプリントに参加しないでも集団についていってゴールするのは割と選手なら誰でもこなせることです。でも、高い山を登る時に集団についていくのはとても大変だったりします。なので山は集団がばらけがちになり、遅い人と早い人のタイム差がくっきり出てきてしまうのですね。


で、エースになるような人はこの山でもクライマーに遅れず登ることができ、平地でもある程度スプリントができる人になることが多いのです。


とりあえず大雑把に分類したこの3つのタイプさえ把握していれば大丈夫です。ロードレースのチームはだいたいこのスプリンター、クライマー、オールラウンダーが混在して編成されることが多くなっています。


つづく